編集者メッセージページ

  • 全編通じて凄まじい過剰さを感じた。圧倒されました。絵もセリフもいい。月並みだがこの人にしか描けないものだと思う。扉からして「ああ、何か凄いモノが始まってしまう…」という予感が漲っている。こういう扉はまず普通描けるもんではない。そして2p冒頭の「私は『山井』という名の家に生まれた女です」というネーム。シンプルだけど迫力十分w もうそこからは、どんどん引きすりこまれていく一方だった。すべてのコマに「こう描きたい!!」という美意識が横溢している。演出もいい。8p、美術館の絵の方向からガラス越しに主人公を描く一枚絵なんかもいいセンス(ただし、それがちょっとわかりづらい。8pはこのままでいいが、次の9pの一コマ目の「額にはいった絵」の絵をもっと大きく描くべきだった。そうすると、かなりわかりやすくなるはず)。
     と、誉めちぎったものの、現段階では漫画としてはかなりわかりづらい。まだまだ未整理な感じがするし、独りよがりな表現もある。でも、それは新人なんだから当たり前だと思う。これからそれこそいい編集者と二人三脚で修正していけばいい。
     独りよがりな部分もあるが、それは単なる技術不足であって、読者を意識しようという姿勢(言うところのエンタメ性)は随所に十分感じる。最終的に描こうとしているものも、(おそらく)生や人間というものに対する肯定的なメッセージなことも評価できる。これはプロになるうえで大事なことだと思う。
     あとは明快でキャッチーな設定とキャラをいかに見つけられるかだろう。つまり「間口の広い入口」を用意してほしい、ということ。漫画をアトラクションに例えるなら、現状は、入った人は満足してくれるものの、そもそも普通の人はなかなか入ってこないような景色になっている。入口は広く、誰でもウェルカムな感じにしておいて、出口は狙ったところに誘導する感じがいいのでは。今後に大いに期待。世の「通俗なるもの」(もちろんいい意味です)に決して背を向けず、間口の広さを研究してほしいです。
     

    2018/03/17 15:03

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